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コロナショック時における松山の不動産市況と今後予測

この度は、弊社のホームページをご覧頂き、ありがとうございます。
実はホームページを立ち上げ暫くブログの更新をしなかったため、何人かの方から寂しいと言われました。私としても本筋の仕事をやりたいので積極的にブログを更新することは考えておりませんが、ブログ更新の話があったとき、丁度、直近の松山の不動産市況を振り返ってみたいと思い、コラム形式で本文を纏めてみました。書ける範囲で纏めた取り留めもない内容になりますが、ご興味を持たれた方は御一読ください。

 


(撮影場所:ヴェネツィア サンタルチーア駅前)

 

2020年2月10日時点で私はイタリアにいた。まだ感染の爆発前であったが、イタリアの空港ではコロナウイルスに対する厳重な体制が整い始めていて、入国にあたり特殊防備をした入国審査官が非接触型の体温計を用いて検査を行っていた。入国後のベネチアとローマは特にコロナの影響を感じさせず「通常」と思われる観光を楽しむことができた。

その後バルセロナに移動した時も同様、2月とはいえバルセロナ特有の温暖な気候を味わいながら市内観光を順調に終えることができた。当時、観光客を含めマスクの着用をしている人たちはほとんどおらず、ヨーロッパでもコロナウイルス感染が拡大しつつあるというニュースがどこか信じきれていなかった。

 

毎朝起きたとき、私は持株及び前日のダウと為替の値動きを確認するようにしている。バルセロナにいるときも同様で、時差もあり向こうで深夜1時くらいだったと記憶している。携帯から板をチェックしていると私が保有していたA株が下がり始める兆候を見せた。

詳細は割愛するが、下げ止まりと見せかけた20万の厚い買いが板上で確認でき、それは機関の売り仕掛けのようにも見えた。バリュー株に近い銘柄ということもあり、私は長期保有ベースで売らないと決めていたので確認だけして寝たが、帰国後も株式市場の悪化は続きピークで700万円程度出ていた利益は2週間近くで100万円になり結局売却。さらにその後も下がり続けた。

 

イタリア、スペインから帰国した後の2月28日、ニュースを見て愕然とする。先日まで遊んでいたこれらの国々で感染者数及び死者数が急速に増加していることがすぐには信じられなかった。私自身がウイルスに感染しなかったことは幸運だったが、あの時間違いなく感染拡大は始まっていたのだ。

バルセロナの夜、株価が下がり始めたあのタイミングでもう少し想像力を働かせるべきだった。コロナウイルスの感染爆発を受けてヨーロッパにおいては、3月10日にイタリアがロックダウン。3月14日にスペインがロックダウン。イギリスでも3月23日にロックダウンを開始した。その後、東京でもロックダウンの話がニュースに出始め、ついに4月7日緊急事態宣言が発令された。

 

全国的に緊急事態宣言が広がる中、愛媛県でも4月16日に緊急事態宣言が発令された。興味本位で何度か八坂通りを車で見に行ったが、普段賑わう二番町の夜も閑古鳥が鳴くようになりコロナショックの厳しさを感じさせた。私から見ても新宿夜の街で感染拡大しているニュースは強烈だったため、二番町で飲食店やクラブが店を開けていても人が来ない状況が続いたのは、保守的な愛媛の県民性を考慮すれば当然のことだったと思う。

 

その後、地元のいくつかの銀行は潔かった。緊急事態宣言中では不動産の融資相談など一切できないような雰囲気があったが、緊急事態宣言が5月25日に解除され松山の地元銀行も徐々に活動を開始した後、6月に入ると、飲食系、ソシアルビル系、オフィスビルの融資は行わないという結論を出した銀行がある(と聞く)。飲食系やソシアルビル系は理解できるが、オフィスビルの融資をしないという結論を出したのは強烈だった。6月時点でオフィスビルの案件を抱えていた私だったが、売主の希望を満たすことはできなかった。

 

また、同じく6月で末時点の話である。インバウンド訪日客が激減することで、買付証明書をもらっていた広島・松山のホテル2案件の話もなくなった。ホテルについては、全国的に運営会社が破産するケースや賃料の見直しを迫られることから、収支の組み立てを一から行うことになり、土地の評価額が出ないという結論に至るケースが目立った。

私は改めて売上主義的な事業の怖さを感じた。松山にも惜しくもホテルバブルがきていたさ中、残念でならない。おそらく今後数年間ホテル業者が松山の土地代を吊り上げることはないだろう。

 

更に、時間貸し駐車場もコロナショックの被害者となる。二番町界隈に限らず、緊急事態宣言発令後、市内で活動する人が極端に減ったため、駐車場の売上が大幅に減少。大手駐車場運営会社も頭をかかえ、所有者への返還固定賃料を数か月間だけ半分にしてほしいなどの交渉に出ていた。

私は、瞬間的にチャンスだと思い、とある駐車場の所有者をあたり、時間貸し駐車場の売上激減の状況を鑑み売却をしないかと話を持ち掛け、所有者の満足いく価格ですぐに買主を見つけた。売主と買主の基本合意までは10日くらいだったと記憶している。

 

悪い話ばかりの緊急事態宣言解除後の不動産事情ではあったが、住居系賃貸の人気は根強いと感じた。愛媛大学や松山大学付近の賃貸マンションはある程度の影響があるものの順調に稼働しており、今後新規学生寮の計画も2棟あるのを把握している。

ホテルや店舗系がコロナショック直撃した一方で、賃貸マンションや学生寮等はエリアを外さなければ今後も確実な需要があるだろう(他方、飲食系に勤務する人が入居する街中の多くの賃貸マンションに滞納が見受けられた)。私が確認している範囲では、市内の築浅賃貸マンションが2020年6月以降で2物件ほど表面利回り6%中盤で動いており、地元地方銀行も資金力のある人達には確実に融資実行しているのを忘れてはいけない。

 

分譲マンション事情においても簡単に触れておきたい。3月末までに順調に進捗していた物件も4月に入るとピタリと止まり、緊急事態宣言解除後も厳重なコロナ対策によりお客様の入場制限をするなどし、販売において苦戦を強いられていたと聞いている。

8月に入るとマンションの販売進捗も一定数戻ってきているが、お客様が借入を希望する際、融資する銀行もシビアになってきている分、今後一定期間売れ行きが鈍化するのは避けられないと思う。しかしながら、市内のマンション用地の仕入れ状況は悪化するどころか加速するくらいの勢いをみせ、需給バランスが崩れる可能性があることも考慮しておかなくてはならない。

 

中でも個人的に興味深いのが、ファミリータイプが主流で動いてきた松山においてコンパクト系の分譲マンションが供給されることである。以前においては、旧株式会社住宅情報館(現在の株式会社タカラレーベン西日本)が供給した「ヴァレーレ県庁前」くらいだったはずだが、現在においては株式会社ミツワ都市開発が供給している「スペルビア勝山」や株式会社関電不動産が供給予定の「シエリア松山市駅」など徐々に増えつつある。

 

コンパクトマンションのニーズがどこまであるのかは今後の進捗を見なくてはわからないが、広島市で一定数見られる一方、四国でここまで供給されるのは松山くらいではないだろうか。リスクをとって事業化された物件の動向を見守っていきたい。

 


(撮影場所:バルセロナ ランブラス通り)

 

●今後の予測(アフターコロナin松山)

私が現在これを書いているのが2020年8月22日。これまで大雑把に松山市内の緊急事態宣言発令から解除時までの不動産の動きをまとめてみたが、今後の松山の不動産動向を考える上で、次に何を予測しなくてはならないだろうか。

 

まず、コロナ問題を直視したとき、ワクチン治療薬問題がある。私は2020年4月時点でワクチンが開発されたらコロナ問題は収束すると考えていたが、今は違う。コロナに乗じて中国香港問題が激化しこれに伴いアメリカによる中国制裁活動がより活発になってきた。コロナが起きる前から見え隠れしてきたお互いの嫌な部分がコロナショックでより顕在化したことで多くの国々が保護主義の立場を一層取り始めている。

 

数年前まではグローバル化によりボーダーラインを超えることの良い部分だけがフィーチャーされてきたが、グローバル化の形も今後は「ある程度お互いに距離を取りながら相互恩恵のみで相手とビジネスをする」ように変わっていくのではないかと思う。しかしながら、考えれば考えるほど、この「ある程度の距離」が怖い。アメリカと中国に挟まれた日本が近隣諸国との付き合い方次第で最悪のケースでいけば、市場がコロナ時より更に悪化する、を想定しておかなくてはならないだろう。

 

次に、ワクチン治療薬が開発されたら市場動向はより活発になるというのも考えられるが、少し安易なようにも感じる。コロナ禍により東京のオフィス賃料は下がる傾向を見せ、テレワークにより東京郊外の住宅需要が強まる中で、不動産事情において数年単位で「もとに戻る」選択肢はないだろう。

日本全体が新しい生活様式に既に移行し始めているため、ワクチン治療薬問題解決により一時的な日経平均上昇がみられたとしても実態経済回復とまではいかず、不動産市況は滑らかに下落するに違いない。これは、現在の経済対策に問題があるからという訳ではなく、アベノミクス以降国内の不動産価格が上がりすぎてしまったことの反動の方が大きいと個人的にはみている。

 

そのような中で私が考える当面、松山で失敗しない不動産売買開発のメインは、レジ系だと思っている。購入や開発においても場所を間違えない、長く持たない(事業としてやる)、適正な収益構造で組み立てる、といった適切なリスク管理において事業を組み立てることができれば利益は出続けるはずだ(難易度は高いと思われるが)。そうなれば競争になり各社足で稼ぐしかないだろう。

不動産営業はテレワークでは難しいので、営業にも課題が残る。ちなみに全国的には内需の見直しに伴い、倉庫関係の物流用地が一定の人気を博しているが、四国での物流需要は非常に少ないため、個人的に厳しいという結論に至っている。

 

これまで文章を淡々と書いてみたが、纏めている中で「それなら松山はどうすればいいんだ」と自問自答していた。あくまで私の今日時点の考えですぐに変わると思うが、最後に思案していることを書いてみたいと思う。私自身の独断と偏見で書かせていただくと、松山は観光に依存するべき都市だと思う。

人口50万、これといった産業がない中で、多くの人の職を維持するには観光に頼るべきだと思う。これは外国のインバウンドに依存するという意味ではなく、国内市場により力を入れていけば将来はもう少し明るいという意味である。東京から1時間30分。空港から市内まで20分程度という好立地で、旅という名の「非日常」に「安全性」を織り込んであげれば今以上に安定していくように思える。

 

具体的には、これまで松山の観光を支えてきた松山城、道後温泉の二本の柱に加えて、松山青年会議所が実行した「島プロジェクト」をもう一段階促進させてみるといいかもしれない。島で味わえる島生活。魚を釣って食べたり、イノシシなどのジビエ料理、みかん狩りなどを提供したりと基本的なポイントを押さえた上で、ゴルフ場や地元料理専門のレストラン、お洒落カフェを作ってみるなど、もう少し本気でやってみてもいいかもしれない。この辺りは高松近郊の島々を参考にしながらこれを超える目標が松山には必要になってくるだろう。

 

付け加えて言えば、映画「ジュラシックワールド」に出てくるようなモササウルス(実際にはイルカやその他)が間近で見られる島と自然と一体化した水族館。これを島プロジェクトに混ぜ込むくらいのスケールで考えることはできないだろうか。島の入口にみかんジュース専門店やタオル販売店も出店(ロープウェイ街のように)。島独自の手土産なんかも準備できたら面白いはずだ。

また、ホテルを建設し、その一部にWi-Fiを完備したビジネス用途で数ヵ月間引きこもりたい人専用の部屋を準備してあげてもいいかもしれない。島という独立した空間をうまく利用することにより、松山のアフターコロナの活路は見いだせると思うのだが。

 

今回のコロナショックにより、星野リゾートは4月、5月と予約状況が極端に悪化していたようだが、7月8月の予約は順調だと本で読んだ。これは、これまで国外でお金を落としていた富裕層が国外にいけない結果、国内で過ごしているからだと推測されている。それならば松山も島の特性を活かし、島でインパクトある不動産の運用を活発化させることで国内の観光市場の位置を確立させ次の安定のステージに立てるのではないだろうか。

アフターコロナにおいて松山でどのような不動産開発を行うのかは、街の発展を目指す我々にとっては死活問題であるくらいの覚悟はしておいた方がいいかもしれない。

 

(2020.9.7 一部加筆修正)